この前小菅と会った。実に4年半ぶり、くらい。久しぶりに会った彼は相変わらず飄々としていて、かっこよかった。あぁ、生きてたんだなあ、わたしの知らない4年半の間も、彼は彼の時間を過ごして生きていたんだなあと思うと何だか感極まって涙が出てきた。

「元気そうでよかった、お前のことは戸塚からいろいろ聞いてるよ。俺が消えてから正直侑衣は死ぬんじゃないかと思ったけど、やっぱり普通に生きてるよな、そりゃ、簡単には死なねえよな、俺が消えたくらいじゃ。それは当然だろうし分かるんだけど、何か釈然としねえしちょっと悔しいよな。いや、お前に死んでてほしかった訳じゃねえけど。これも三滝がいたからかと思うと余計に腹立たしいっつーか、何かうまく言えねえけど、変な気分だよ。俺は侑衣が嫌になって侑衣の前から消えたわけでもないけど、事実消えたことに変わりはないから今更とやかく言う筋合いはねえんだけど。本来なら今こうやって会うべきじゃないってことも分かってるけど、やっぱりお前のこと今でも特別なのは変わりないから、元気そうにしてんの確認できて、よかったよ。三滝が一回お前から逃げて、それでもやっぱり戻ってきたのはすげーことだったんだと思うよ。俺はもう戻ってこようとは思えねえもん。かっこ悪いしな。結局俺も侑衣も、あの頃はお互いがいなけりゃ無理だ、なんて思ってたけど、そんなことなかったってことだよな。結果論かもしんねーけど、俺もお前も平気で生きてこれてるし。そういう意味では俺たちはやっぱり違ったんだな。俺が言えた立場じゃねえけど、三滝は間違いないとおもうよ。もう何も心配しなくても大丈夫なんじゃねえの、侑衣は。」

小菅は概ねそのようなことを言って笑った。わたしの好きな、ちょっと人を小馬鹿にしたような笑い方で笑った。小菅もわたしと同じようなことを考えていたのだな、と思うと嬉しかった。あの頃はわたしも小菅がいないと生きていけないような気がしていたけれど、実際いなくなっても生きていける自分に腹が立ったし、小菅が生きているという話を聞いても腹が立った。わたしにとっても小菅は特別で、今までも小菅を忘れられなかったしきっとこれからも忘れないとおもう。どうあっても小菅のことはとても好きだ。でも、うまく説明できないけれど、わたしたちはお互いに“そうじゃなかった”。ただそれだけのこと。結局小菅とは1時間ほど話をして、すぐにばいばいした。この4年半の間のお互いの話なんて、特にする必要がなかった。多分もう、会うこともないとおもう。
わたしは何だか嬉しくなって、そのまま新幹線に乗って三滝くんのところに向かった。三滝くんと話がしたかった。会ってすぐに小菅と会った話をした。黙って会ってごめんね、と言うと、三滝は苦笑いをしながら「小菅と会うことは知ってたよ、だってあいつがまず僕に連絡してきて、侑衣と話がしたいからって僕に断りを入れてきたんだ。ご丁寧に会う日の詳細も教えてくれてさ、」と言ったので驚いた。「正直会わせたくなかった。もしかしたらまた侑衣さんが小菅に夢中になるかもしれないと思ったからね。でも、こうして僕に会いに来たってことは、僕はもう安心してもいいんだろうか」と笑いながら三滝が言うので、わたしは三滝のことがとっても愛しいなあと思った。もしかしたら初めてかもしれない、三滝に向かって「わたしはたまに分からなくなるけど、優巴のこと愛してるんだとおもう。」と言った。三滝は泣いた。わたしもちょっと泣いた。今更ながら、三滝となら幸せになれるのかもしれないな、と漠然と思った。明日はどうだか分からんが。