小菅がまだ生きているらしい。とっちが小菅が今どこで何をしているのかということを知っているらしく、知りたければ教えてやるし、会いたければ会わせてやると言われた。正直に申しますと、小菅がどこで何をしているのか知りたいし、会いたいよ、彼がわたしを愛してくれるのであれば。以前のようによしよしって、頭を撫でてくれるのであるならば。そうでないなら会いたくない。生きてるってことも知りたくなかった。
結局はたちの誕生日に三滝のことを大事にしようとおもったわたしは、そうじゃなかったんだよ。三滝のことを大事にしようと思ったんじゃなくて、三滝にまた大事にされようと思っただけなんだよ。三滝のことなんか好きじゃない。好きだけど、好きじゃない。そもそもわたしに好きな人なんていない。わたしを特別な女の子としてよしよししてくれる存在が好きなだけで、わたしを大事にして、よしよしって頭を撫でてくれるなら誰だっていい。
てゆっか、なんとっちが小菅のこと知ってて、わたしが知らないわけ?小菅のことなのに。仁一くん、なんでわたしには連絡しないのに戸塚には連絡してるの?それが気にくわないからやっぱり知りたくないし会いたくない。かもしれない。小菅が真っ先にわたしに接触してきたのであれば、よかったのに。結局最後は侑衣のところに戻ってくるという小菅の言葉は嘘だったのだろう。わたしだって小菅はわたしのところに戻ってくると確信していたけれど、それも勘違いだったんだね。悔しい。なんでなんで、なんでなの。本当に悔しい。
わたしは高校生の時から小菅と三滝を天秤にかけて、どちらがよりわたしを大切にしてくれるのかを考えている。どちらがより同じ目線に立ってわたしと話ができるのか、どちらがよりわたしを特別な女の子として、わたしに全てをかけてくれるのか。清直のことがあってから、わたしの他に、わたし以上に大切なものがある人はまっぴらごめんだと思うようになった。その点で三滝には温かい家族という存在があったから、いざとなれば三滝には帰る場があったので、いつかいなくなってしまうかもしれないと思った。反対に小菅に家族はいないも同然だったし、特に帰る場もないように見えたので、わたしを第一に大切にしてくれると思った。わたしが彼を大切にしている限り、彼はわたしにすがって、わたしなしでは生きていけないだろうと考えた。けれど実際は逆で、わたしが彼にすがって、彼なしでは生きていけなくなってしまったのだけれど。
大切にして、頭をよしよしって撫でてくれる人に縋ってその人に依存してその人を自分の重みで潰してしまうのはわたしの悪い癖だ。清直にはもう愛が何なのか分からないと言われてしまったし、今わたしを大事だとしてくれている三滝も、一度わたしの人生から逃げたことがあった。小菅だっていなくなった。やっぱり、わたしの他に大切なものがない人でもだめだ。わたしの依存をも受け入れてくれる人でなきゃだめだ。わたしは人を自分のものにするのがひどく得意なので、その場しのぎの人ならいつでもいくらでも作ることができる。でもそうやって単にわたしを大切にしてくれるだけでは、もうだめなんだね。つくづく面倒な女だ。救いようがない。
とまあ、小菅のことをとっちに聞くのか聞かないのか、そういうことをずっと考えている。もし今もう一度会えば小菅はわたしを大事にしてくれるだろうか、三滝よりも大事にしてくれるだろうか、など。今現在わたしを大事にしてくれている三滝のことなど、もはやただの物であるかのように。